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第267話 

離婚しても同じ部屋で寝ることに、彼は全く抵抗を感じていなかった。

「いいえ、あなたがベッドで寝て、私はソファで大丈夫」お前は冷静に手を引き抜き、「先にシャワーを浴びてくるから、休んでいて」と言った。

言い終わると、彼女は返事を待たずに部屋を出ていった。

藤沢修は虚ろな手を見つめ、ため息をつきながら彼女の背中をじっと見つめた。

彼女が部屋を出て行ったあと、胸を押さえて、そこに痛みを感じていた。

......

松本若子がこの部屋を出て行ったとき、全ての荷物を持っていったわけではなかった。彼女のものはまだたくさん残っており、泊まるには都合がよかった。

彼女が隣の部屋でシャワーを浴び、着替えて戻ってくると、ソファには既に布団が整えてあった。

若子は振り返って不思議そうに尋ねた。「これは執事がやってくれたの?」

「そうだ」修はベッドにうつ伏せて、彼女を見つめながら小さくうなずいた。

実は、自分で彼女のために整えたのだ。執事ではない。

だが、こんな些細なことを伝えたところで、今の二人の関係に変化があるわけでもない。

若子は「そう」と一言だけ言って、特に疑うこともなく深く追及しなかった。

彼女はソファに腰を下ろし、髪をほどくと、長く黒い髪が花のような清らかな香りを漂わせた。

彼女はソファに横たわり、「もう寝る?じゃあ、電気を消すわね」と言った。

修は「うん、お前が消して」と答えた。

若子が手を軽く叩くと、感応ライトが暗くなり、部屋は真っ暗になった。

修は最初うつ伏せていたが、電気が消えると身体を少し動かし、若子の方に顔を向けるように横向きになった。

若子はその音に気付き、少し眉を寄せて言った。「動いたの?」

「ちょっと横向きになってるんだ。この方が背中の傷に当たらなくて楽だから」と、彼は素直に答えた。

「そう。横向きで楽ならそれでいいけど、絶対に仰向けにはならないようにね」

「わかった」修の口元には、

松本若子には見えない優しくて深い笑みが浮かんでいた。

若子は急にソファから起き上がり、スリッパを履いて少し歩くと、小さなナイトライトを取り出してソファのそばのテーブルに置き、ライトを点けた。

部屋はほんのりとした光に包まれ、眠りの邪魔にならない柔らかな明かりだった。これで、彼女はベッドに横たわる彼の様子を見ることができた。

「どうし
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